一般質問 2009年

一般質問
明戸真弓美

自由民主党 荒川区議会 議員団を代表して、質問をさせていただきます。補欠選挙で当選しましてから8ヶ月、こんなにも早く、一般質問のチャンスをお与えいただきました同僚議員の皆様に感謝を申し上げます。
 1年前の9月の初め、ちょうど私が公募に応じ選挙に出ることになった頃ですが、リーマンショックと世界同時不況が悪夢のように始まり、その影響下での経済不安や雇用不安、また、規制緩和により広がった社会的格差、次々と明らかになった食品偽装や年金疑惑によって国民の信頼を失った行政。先の2つの選挙での都民・国民の審判は自民党にとってはたいへん厳しいものとなりました。リーマンから1年経った今、その当時、多くの人は予想だにしていなかったのではないかと思いますが、政権政党が変わり、私の方は区民の代表としてこの区議会の檀上に立ち、本日質問するに至りました。多くの区民のご期待に応えるべく、区議会議員として「税金の適切な配分」と「区民への説明責任」の職務を、残りの1年と8ヶ月、まだまだ未熟者ではございますが、大好きな荒川区と区民に対する愛と感謝と、そして責任をもって全うする所存です。
このたびの政権交代で政策の方針が大きく変わる可能性のある中で、しかし、この荒川区ではブレることなく西川区長の目指す区民の「安心の砦」「区政は区民を幸せにするシステム」を一心に実現していくこととは思いますが、すでに北城議員からの質問で、自民党の予算要望を受けての今後の区政運営についてはお聞きしておりますので、区民の幸福実現のために一緒に歩んでいくことを重ねて確認して私の質問に移らせていただきます。

さて、初めに、若者をはじめ、幅広い世代が気楽に交流できる公共的空間づくりについてお伺いいたします。
先日、区の団体によって実施されたまちづくりに関わる講座を受講したという2人の若者の話を聞いて「はっ」と思ったことがあります。荒川区の行政には多くの区民が関わっていますが、意外と若い人の情熱やエネルギーをうまくまちづくりに取り込めていないのではないか、と思ったことがこの質問のきっかけです。
今後、荒川区では「地域大学」構想に基づいて人材育成事業を行うことが予定されております。しかし、先の2人はこう言っておりました「講座は修了したけれど、具体的活動に繋げていくことが難しい」と。荒川区のため、まちのため、自分たちの力を活かしたいという熱い思いを、その自主性を損なわずに支援していく、次にはこの点に取り掛からなくてはならないと思います。
昨年まで私が勤めておりましたNPOでは「まちの駅」事業を行っておりました。「まちの駅」は地域住民や来訪者が自由に利用できる休憩場所や情報を提供する機能を備え、すべての人に開かれた公共的空間です。すでに全国に1500程度あります。「まちの駅」には案内人もいて、その地域ならではの情報の提供や道案内など笑顔で相談に乗ってくれます。この「まちの駅」の考え方を荒川区にあった方法で実施し、ボランティアや団塊世代等の人材の発掘・育成の課題を始め、地域に何か貢献したい、地域をもっと知りたい、地域の人々と交流したいと考える人々を結びつけるようなしくみづくりに活かせるのではないかと考えています。
この「まちの駅」の仲間に、新潟県長岡市の「ながおか市民センター」があります。ホームページには「市民のみなさまから育てていただく施設です」とあります。駅前の撤退したデパートを借りて、1階の入口の目立つところにまちの案内人がいて、住民票などの証明書を発行する市民サービスセンターや、市民ギャラリー、市民談話室、障害者プラザ、国際交流のための広場があり、まちの情報コーナーもあります。2階には男女平等推進センターと市民活動センターがありますが、市民活動センターには250を超える登録団体があり、会議室や印刷機を利用しているそうです。3階には市民相談、ハローワーク、4階で子供の一時預かり、5階には長岡名物の花火を映像で見せるミュージアム、地下にはイベント広場があります。この他にも空いたスペースにもらった机と椅子を並べてあるだけの学習コーナー、市民の発意によって館内に郵便ポストを設置したり、この建物自体もまちの駅ですが、道案内、まち案内を行ってくれる周辺商店街の37店舗を取りまとめて「越後長岡まちの駅ネットワーク」もつくっています。
床面積も広いこの市民センターの例を一足飛びに比較するわけではありませんが、荒川区には「地域コミュニティの拠点」としてふれあい館があります。今後3年の間に5か所が建設される予定です。現在、ふれあい館は、世代を超えての利用者が、サロンスペースや様々なイベントで交流を図っていますが、日常的な公共空間の一つの場としてもっと積極的に活用してはどうだろうかという提案です。
 現実にあたっては、確かに難しい問題が多々あるものと想定されますが、効果の見込める館を一つ選び、人と人をつなぐ拠点、人と地域をつなぐ拠点として日常的に機能させていくことをぜひ試みていただきたいと思います。
すぐにでも取り入れることのできることもあります。まず、人を引き付けるものの一つは「情報」ですが、ふれあい館で地域の隠れた魅力やスポットの紹介や、そこで開催されるイベント、地域とのつながりを持つための窓口、地域の人材を養成する講座がどこで実施しているかなどがわかれば、より地域参加が進み、地域拠点となるはずです。また、先の長岡市市民センターの階段の踊り場に設置されたインフォメーションボードのように、乳母車譲りますから、イベント開催しますまで一面に情報交換ができる仕組みも良いと思います。活動団体の連絡先としてのメールボックスや、情報を発信する印刷機の貸し出しもあって良いかもしれません。
もう一つは、案内人です。まちの駅では「駅長さん」と呼ばれます。実際の運営にあたってはコーディネーターとなる人材が必要です。ふれあい館で交流をサポートする人材として、地域に密着して活動しているボランティアの方々の力を借りてはいかがでしょうか?そうすることで、地域と人、人と人とのつながりがより一層強まるものと考えます。
以上のことは「地域コミュニティの拠点」であるふれあい館のコンセプトにも合致するものと思いますが、区の見解をお願いいたします。
なお、もっと将来的なことになりますが、こういった区民団体に対する資金面での支援も全国では自治体が関わって行っている例もあります。このながおか市民センターには市民活動団体助成制度があり、「はじめの一歩」応援で20万円まで、「もっと!パワーアップ」応援で50万円までの助成を行っています。都内でも千代田区では「千代田まちづくりサポート」で千代田区のために働くならと区外の人も受け入れて助成し、新しい発想と意欲でまちづくりを推進しています。こういった制度は、行政改革で手の足りなくなったところを区民・市民の力で補う意味があると思います。

 次に商店街振興についてのことを伺います。
話は今から97年前、明治44年、西暦に直すと1911年ですが、都電荒川線の前身の通称「王電」、「王子電車」の大塚-飛鳥山間が開通し、その2年後の大正2年、1913年に飛鳥山-三ノ輪間が開通しました。あと数年で、われらが都電荒川線は開通から100年を迎えるのであります。
初期にはあの渋沢栄一も出資して設立された王子電気軌道株式会社は、途中の資金難で安田財閥が入ったり、まさに歴史を生き抜いた荒川区の遺産です。東京市内を縦横無尽に走っていた都電は41系統。本区を走る荒川線が、先人の保存運動のおかげもあって都内で唯一残された路面電車となりました。
100年まで早くてあと3年、残された時間は十分ではないかもしれません。東京都でも記念イベントを考え始めたようですが、路面電車統廃合の際に「荒川線」と改名された幸運もあります。荒川区でも都電100年を記念して大イベントを企画し、大いに荒川区をPRすべきだと思います。
さて、本題の商店街振興です。都電荒川線沿線には魚の骨のような形に商店街が発達しています。まだまだ元気な商店街もありますが、疲弊の色の見えてきている商店街も多くあります。区でも多くの商店街振興策を行っているところでありますが、なかなか効果が見えてきません。そんな中、数年後に「都電100年」があるのです。大々的にPRして都電に多くの人が乗りに来たとします。降りて荒川区を歩いてみたいと思わせる誘導ができているでしょうか。今のままでは必ずしもそういった観光客を商店街に誘導し、売上を上げるような仕組みになっていないように思えます。この「都電100年」はぜひ自信をもって「都電と商店街―残された昭和の町」とでもいったキャッチコピーにしてもらって、「都電と商店街」を強くPRしていただきたいものです。
「荒川遊園」や「バラ市」から商店街へ連れ出す仕組みが効果的に動くまでには時間がかかるかもしれませんが、まずハード的な面、都電の電停から商店街までの路上も含めたわかりやすい表示の充実をお願いしたいと思います。すぐにも取り掛かれる方法として、手始めに区内に61か所ある街区案内板に商店街の表示をしてみてはと思います。観光客を商店街に誘導する施策について、区のご見解をおたずねいたします。
荒川区でも多くの支援を行っている商店街ですが、これから商店街が生き残っていくためには、いかに自主財源を確保するかといった視点が欠かせません。後継者の問題もそうですが、次世代の商店街リーダーの活動を支えるためには、自由な裁量で使える資金を確保する必要があります。そうすれば、たとえば商店街独自の企画や営業ができるような専任の若者を雇うこともできますし、イベントの幅も広がります。自主財源確保の方法は駐輪所経営や有料の修学旅行生の受け入れといったものもあるようですが、折しも今年規制緩和になったものに有料装飾灯広告があります。商店街や広告関係者とよく話し合って、最良の方法をとってほしいと考えますが、有料広告導入にあたって、たとえば東京都の「都電荒川線100年」の広告と相互乗り入れにするとか、様々なアイディアがあると思いますが、そういったアイディアを実現する際に、区が窓口となって積極的に推進していくべきだと思いますが、どうお考えでしょうか。
また、商店主の高齢化の問題もあり、地域住民で商店街をサポートできるような仕組は常々良いと思っておりましたが、昨年実施した商店街サポーター制度事業の検証と今後の展望についてお聞きします。

 次に、幼児教育・児童事業の充実についてお伺いをいたします。
子育て支援は先の衆議院選挙でも与野党問わず争点となったところでありますが、子ども手当が支給されるにせよ、保護者が安心して子育てのできる環境を整えることが何よりも大切です。この点を踏まえ、まず、私立・公設民営保育園が長期にわたって安定的に保育サービスを提供するための支援についてお聞きします。
私立・公設民営保育園においては、限られた人材・財源を最大限活用して、区立保育園と同様に、もしくは独自の特色を活かして質の高い保育サービスを提供しています。
9月1日に、ある園の防災訓練を拝見させていただきましたが、まだ首の座らない57日目の乳児と0歳児2名を避難させているのを見ました。保育士の手は子ども2人で一杯でした。避難時の園児の安全を図るため、保育士たちが真剣に訓練に取り組んでいる様子に心を打たれ、保育サービスの重要性について、認識を新たにしました。
このように、保育園では、施設長をはじめとする職員が日頃から最大限努力することで、保育サービスの向上に努めており、今後、私立・公設民営保育園について、区立保育園と同様に支援していくことで公私格差が生じないようにしていくことが安定した保育サービスの供給につながると考えます。
また、区では、区立保育園を公設民営保育園へと進めていく方向であり、現在保育園を運営している法人が安定して運営できるよう、運営経費などの面について鋭意検討し、支援を拡充することが、安心安全な保育体制を構築することにつながると考えます。
同時に、南千住保育園の公設民営化にあたっては、十分に保護者の理解が得られるよう、説明を行っていくことを要望いたします。

さて、幼稚園・保育園から小学校に上がる際に、入学後の生活の変化に対応できにくい子供もおり、小学校1年生などの教室では、学習に集中できない、教師の話が聞けずに授業が成立しないなど、学級がうまく機能しない状況も見られ、いわゆる小1プロブレムとして社会問題となっています。
子供一人一人がこうした生活の変化に適応し、義務教育及びその後の教育において実り多い生活や学習を展開できるよう、幼稚園と小学校が相互に教育内容を理解したり、子供同士の交流を図ったり、指導方法の工夫改善を図ったりすることが求められていますが、荒川区では、この問題を未然に防ぐために、幼稚園から小学校への円滑な接続についてどのように対応策をとっておられるでしょうか、教育委員会の見解を伺います。

また、ふれあい館化に伴う、児童事業についてお伺いします。たとえば、保育園においては民営に移行する際に1年も新旧の職員が施設の引き継ぎをすると伺いましたが、ふれあい館の児童事業の場合はそういったことに配慮していただけないのでしょうか。また、ひろば館からふれあい館への移行にあたっては、直営から指定管理者の運営になると思いますが、区の職員が訪問指導するなどの対応が必要なのではないかとも思います。各ふれあい館の児童事業の水準を維持し、子育て世代の多様な要望に対応するためにも、そして利用者の不安を取り除くためにも十分な引継ぎ体制を確保すべきと考えますが、見解をお聞かせください。

 次に、区民の安心・安全についていくつかお伺いします。
はじめに、孤独死を防止するための見守りについてです。
東京都 監察 医務院の資料によれば、平成19年度の特別区におけるひとり暮らし高齢者の不自然 死者数は3,000人を超えており、高齢者が地域社会から孤立したまま亡くなる、いわゆる「孤独死」を迎える高齢者は少なくありません。
荒川区内のひとり暮らし高齢者については、平成17年の国勢調査で、65歳以上の高齢単身者世帯数は8,588人、全世帯の1割に昇り、区内においても孤独死が発生する可能性は低くないものと思われます。
荒川区でもこのようなお年寄りが住み慣れた地域で安心して暮らせるよう「見守りあい支えあいネットワーク事業」を実施していますが、個人情報保護法などに阻まれて他の区でも実効性が低いと聞いています。この事業の課題や今後の事業の充実に向けての方向性はどのようになっているのか、区の見解を伺います。
それにしても本当は孤独死が問題というよりもむしろ、高齢者が孤独でいることが問題であるはずです。「見守り」という行為は監視と映ると、お年寄りは非常に抵抗感を覚えます。どういった方法でさりげなく見守るのかが大切なことです。そして、さらに一歩進んで、1人暮らしのお年寄りが、ふだんから地域とつながり、明るく豊かな暮らしを送れるようにする手助けをする必要があるのではないでしょうか。明治学院大の河合克義教授(かわい・かつよし)は、「親族とのつながりが深い正月三が日を一人で過ごした」「親しい友人知人がいない」「社会参加活動をしていない」という三問のうち、二つ以上に「該当する」と答えた高齢者は「社会的孤立状態」にあると分析しています。「いきいきサロン」「おたっしゃランチ」はたいへん高齢者にとってはうれしいイベントですが、無理なく日常的にふれあう機会をもっと持てるような仕組みを確立すべきかと思います。区の見解をお伺いいたします。

続きまして、高齢者の交通安全対策についてです。
荒川区では自転車事故の割合が高いと聞いています。自転車運転のルール、実技などを学べる仕組みとして自転車運転免許証制度がありますが、受講生は、現在、小中学生が多い。今後は受講者を区民全体に広げる取り組みを行うべきだと思いますが、どうでしょうか。その際には、特に70歳以上の高齢者の自転車交通事故防止には配慮し、個々人の運動機能の低下の指摘や自転車の性能の点検・整備も含めて検定のような形にし、多くの人が受けることができるようにならないものでしょうか。昨年の自転車の死亡事故2件はともに高齢者に乗った自転車と自動車がぶつかって起こったものだからです。検定を受けた人の中には自転車の運転を断念する人も出てくると思いますが、生活圏が狭くなって刺激が少なくなると、また別な弊害が出てくるので、満70歳以上の方が使えるシルバーパスはあるにしても、荒川区内の公共交通を充実させる整備を急ぐ必要があります。コミュニティバスのまだ走っていない尾久や日暮里方面への拡大や、さらにはMACCプロジェクトで高齢者にも安全に運転できる自転車部品の開発等を将来的には検討をお願いしたいと考えます。

最後に、災害時の弱者対策についてです。
今年も9月となり、防災月間になりました。吉村昭の『関東大震災』という本をお読みになった方は人間のパニック時のもろさとむごさを知ります。あっという間に人命を落とす火事はなんといっても怖いものですが、外国人に対するデマからくるリンチなど、様々な事件が起きたものでした。比較的記憶に新しく、来年には15年を迎える阪神淡路大震災の時でさえ、災害時の犯罪として窃盗、強姦等があったと伝えられています。荒川区は日頃からの備えとして「地域防災計画」の改定により、新たな備蓄努力をしているとのこと評価しておりますが、なお一層の努力をお願いいたします。そうした中、最重点で対応しておくべきがトイレの問題と考えます。先の新潟県中越地震でも多くのお年寄りがトイレに行くのを我慢し、病気になりました。現状の整備状況を伺うとともに、従来の布製テントの無防備なトイレのことを思うにつけ、女性への配慮が重要なのではないかと思います。これは女性である私達が理解を求めないと後回しにされてしまう問題だと思うので敢えてご質問いたします。
以上で質問を終了いたします。前向きなご答弁をお願いいたします。