一般質問 2015年

一般質問(2015年11月会議)
明戸まゆみ

 自由民主党の明戸まゆみです。一般質問の機会をお与えいただきました同僚議員の皆様に大きく感謝を申し上げます。(9,800文字・35分)10,758文字

今年、われわれ自由民主党は立党から60年を迎えました。敗戦から10年、日本の再建を志して、1955年11月15日に当時の自由党と日本民主党の「保守合同」により結成されました。『立党宣言』には「政治は国民のもの、即ちその使命と任務は、内に民生を安定せしめ、公共の福祉を増進し、外に自主独立の権威を回復し、平和の諸条件を調整確立するにある」、また、「創造の努力を払い、過去及び現在の制度機構の中から健全なるものを生かし、古き無用なるものを除き、社会的欠陥を是正することに勇敢であらねばならない」とあります。激動の戦後20世紀から21世紀にかけてこれまで党の運営を続けてこられた先輩諸氏に敬意を表するとともに、この精神は、60年経った現在でも通底する自由民主党の精神であると再認識し、もって荒川区の諸課題にも、かくのごとく対処せんと決意を新たにするものであります。

さて、今回は荒川区の諸課題のうち、「地域力の更なる向上について」「コミュニティカレッジの今後」「中小企業の販路開拓支援」「中学校防災部の今後の方向性について」「隅田川の活用」、以上5点に渡って質問させていただきます。

まず最初に、町会・自治会を中心とした地域力の更なる向上についてお聞きします。
戦後の昭和22年にポツダム政令が公布され、町内会の解体が命じられました。5年半後の昭和27年サンフランシスコ講和条約の発効に伴い、再組織化され、現在に至ります。世界的に見ても、日本は市民活動がとても多い国であり、豊かなソーシャルキャピタルを持っている国だそうです。ただ、一般的に町会・自治会やPTAが市民活動と思われていない向きがあり、適切な対策が取られていないのが衰退の一因なのではないかと思います。
わが荒川区においては、回覧板での情報周知、防火、防犯、防災、ゴミ収集、資源回収、お年寄りの見守り等々を担っていただいており、120ある町会・自治会が荒川区の自治の基盤そのものであるということについては、自由民主党荒川区議会議員団でもたびたび確認してきていることです。荒川区自治総合研究所編の『地域力の時代』によれば、「下町人情がいまだに脈々と生き続ける荒川区は、住民同士のつながりが他のどの地域よりも強いと言われており、それが、治安の良さをはじめとして、住民が安心して暮らせるまちの土台となっている」とあります。
しかし、近年は高齢化が進み、一部パワーダウンしている町会もあると聞いています。荒川区にとっては無くてはならない町会・自治会ですから、ここで地域力の更なる向上策を図らなければならないと思います。
一方、荒川区も変化してきています。不燃化特区の影響もあって、多くの古い住宅が解体され、戸建て住宅やマンションがここ数年で建築されてきています。そういった住居に移転してきた新住民への町会加入の勧誘はどのように行われているのでしょうか。地元の町会を見ていると、戸建ての家が建つとそこに町会長さんか役員さんが行って勧誘しているようです。アパートやマンションの新住民は把握ができない上に、町会費の徴収の仕方がまちまちで、加入したかどうかは判然としないようです。
いくつかの先進的な町会・自治会から学ぶということもあると思います。
先日、ある町会のお御輿の睦会の35周年の式典にお邪魔しました。子どもの健全な育成のために設立したという睦会初代会長さんのお話はたいへん感動的でした。他の町会・自治会にとっても「お祭り」や「お餅つき」等の力仕事は、若い人に手伝ってもらう良い機会なのではないかと思います。最新の「区政世論調査」の報告書によれば、「ご近所の人とあいさつや話をしますか」の問いに「いつもしている」「時々している」と答えた区民が約8割もいるにもかかわらず、「地域の行事や活動に参加していますか」の問いには「いつも」と「時々」参加しているのは35%と低くなっています。町会・自治会のイベントを勧誘の機会と大切に考えていただき、顔見知りなのだから「誘ってみる」「頼ってみる」ということが必要なのだと思います。
ある町会長さんが取り組んでいる事は、町会のイベントを行う時には、とにかく「全世帯・全員に声をかける」ことです。あきらめないで声を掛けるというのは、たいへんに労力のかかることですが、日頃のこういったご尽力により町会が維持されているのだと思います。
 「声をかける」といっても、町会・自治会役員のなり手が少ないというのも現状だと思います。町会の役員については、定年後になっていただくこととしても、西尾久のある町会では「協賛役員」というポストを作っているそうです。「町会活動に参加したいけど時間がない」という働き盛りの世代に協賛役員になってもらって、何かの時に手伝ってもらっているそうです。イベントへの参加はコミュニティカレッジの生徒さん達の研修としても活用できると思います。
「時代に合わせた対応」についておっしゃられている町会長さんもおられます。荒川区でも電話で区民事務所や区民課に町会加入の問合せができますが、横浜市都筑区の例では「町会加入取次依頼書」という書式があり、時間を気にしないで連絡できるファックスやメールでの申し込みができるようになっているそうです。
また、多くの自治体で「町会・自治会加入促進キャンペーン」を行っているようです。人通りのある街なかで行っていたり、区民事務所のような場所や役所で行っていたりしますが、ノボリを立てたり、町会長さんがタスキをしたり、ブースを設けたりしているようです。3月-4月の転入者が多く来庁する時期に合わせて実施すると良いかもしれません。
神野直彦氏が書いているところによれば、「『地域力』とは、地域社会の『共同の不幸』を解決する能力であり、『幸福な地域社会』を形成していく地域住民の能力」です。「地域社会の『共同の不幸』」の最たるものは、災害の時だと思います。災害はまちのすべての人を襲います。町会は全員参加であることを標語等をつくって、区としてもっと打ち出すようお願いいたします。
区の方でも町会については様々方策を考えていると思いますが、更なる地域力の向上について区の見解をお伺いいたします。

次に荒川コミュニティカレッジの今後についてお伺いいたします。
地縁で集まる町会・自治会が縦の糸だとすれば、テーマや気の合う仲間で集まる団体、ボランティア、NPOは横の糸であるかと思います。縦と横の糸が織りなすネットワークが1枚の織物になった時、ある時は困っている人を助けるセイフティネットになり、ある時は人情の機微に触れ、心の豊かさを感じる時をつくるのではないでしょうか。
「荒川コミュニティカレッジ」は平成22年に開校し、5年が経過しました。毎年、様々な年齢の学生がサンパール荒川の6Fで学んでいます。今年はサンパールが改修中で、来年の春には戻る予定です。コミュニティカレッジ卒業生が活躍していただく場について考えていたのですが、それは区内全域なのだろうと思います。卒業生同士がいくつかのグループをつくり、活躍の噂も聞こえてきますので、このコミュニティカレッジも更なる展開を考える時期だと思います。
 まずは、地域活動拠点の整備についてお伺いいたします。在校生も卒業生も含めた地域活動拠点の整備の必要性は、このコミュニティカレッジができる前から指摘させていただいておりましたが、改修後のサンパールに戻るのを機にぜひ整備をお願いしたいと思います。具体的には、オープンスペースに机と椅子を用意していただいて、気軽に会議ができる場所にしていただければ良いと思います。志を同じくする仲間で合意形成し、実践にたどり着くには深い議論が必要になると思います。近いものに、生涯学習センターの「生涯学習情報提供コーナー」という場所がありますが、大学から美術館・博物館情報までと対象が広く、情報提供場所であって議論する場ではないということで、長居しづらいとのお話を聞きました。よく他の自治体にあるような「市民活動センター」のようなものがあり、卒業生も含めて彼らが実践するところまで辿り着けるようにアドバイスを十分に受けることのできる体制があればなお良いのですが、まずは身近な場所に地域活動をするための拠点の整備をお願いしたいのですけれども、区のご見解をお伺いいたします。
そして、この5年の中で、コミカレ卒業生達が集まって、いくつかのグループができていると思いますが、活動成果をまとめた冊子をつくってはいかがかと思います。荒川区のコミュニティカレッジに行けば、こんな活動ができるようになるとか、こんな考え方もあったのかと思えるような冊子です。そして、これから何かやってみたいと考えているシニア世代や若い世代にアピールできますし、こういった活動が荒川区で行われているなら利用してみよう、参加してみようということにも繋がるのだと思います。コミュニティカレッジからできた団体の活動成果をまとめた冊子の作成について区ではどのように考えているのかお伺いいたします。
次に、まちづくりシンポジウムの開催についてお聞きします。
著書『地域力の時代』の中で、神野氏はまた「地域力」を「共生力、参加力、帰属力」と定義し、地域の共通の不幸を「分かち合い」、誰もが誰もに対して幸福を願い合う確信を育て、共同意思決定に対する参加意識を高め、地域社会の一員である帰属意識を高めるようにすれば「地域力」が向上すると書いています。
 荒川区には「市民活動」を担う「ソーシャルキャピタル」が、町会・自治会をはじめ、NPO、任意団体、ボランティア団体、サポーター、社会福祉協議会等々たくさんあります。そういった団体とコミカレ生・コミカレ卒業生が出会い、参加意識を高め、帰属意識を高めて、「共通の不幸解決」のために、区民自らが最前線のことを話し合う場が必要なのではないかと思います。そして、ここには、区も参画していくべきだと思います。行政では取り組みにくいけど、民間だからできることも多くありますので、結果、官民でつくりだす豊かなセイフティネットができるのだと思います。
こういった話し合いのできる「まちづくりシンポジウム」を「協働戦略」の1つとして位置づけ、ぜひ開催していただければと思いますが、区の見解をお伺いいたします。

次に、中小企業の販路開拓支援についてお聞きいたします。
安倍政権発足後、矢継ぎ早に、大胆な金融緩和政策、機動的な財政政策が実施され、我が国の経済は、ようやくデフレスパイラルから脱却しつつあります。アベノミクスは第2ステージへと移行し、新たな3本の矢をエンジンとして2020年に国内総生産(GDP)600兆円の達成を目指し、力強い成長の軌道が描かれようとしております。
 中国などの経済の減速が、景気の下押しリスクとなることが懸念されておりますが、一方で、10月には、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)が大筋合意に至り、世界の国内総生産の約4割を占める最大の自由貿易圏の形成により、新たな活力が創出されようとしてます。
こうした大きな経済環境の変化の効果を享受するのは、大企業だけでなく、中小企業においても、モノ、サービス、資本など、幅広い分野で、21世紀型のルールのもと輸出の増加やアジア太平洋地域の市場への進出が容易になることで、今後も成長が見込まれる地域の広大な市場の需要を取り込む機会が広がってきます。
 特に、高い技術力を有する日本の工業製品については、関税などによってこれまで削がれてきた競争力が高まり、製造業の活性化につながることが期待されます。
 そうした中、区内企業が経済の好循環やTPPにより新たに創出される活力をしっかりととらえ、モノづくりのまちあらかわの地域産業のさらなる活性化につなげていくためには、区内企業の生産性の向上と収益力の強化の二本柱による経営基盤の強化を図っていく必要があります。
区では、わが自由民主党区議会議員団の要請に基づき、区内企業の大半を占める小規模事業者を対象とした区独自の設備投資補助により、設備投資を通じた生産性向上に向けた力強い後押しがなされております。そして、その設備投資によって、より付加価値の高い製品の生産・開発や需要に対する柔軟な対応が可能となった企業が、生産性を高めながら、着実に収益力の向上につなげていくというストーリーを完結させるためには、次のステップとして販路開拓に向けた取り組みが不可欠であります。
具体的には、様々な機械、部品や素材、それらに関連する加工技術など、製造業においては、BtoB、すなわち企業間取引による販路開拓への取り組みが大変重要となってきます。
 これまで区では、「産業展」の開催を通じて、区内で製造された製品等を区内外に紹介するとともに、地域産業に対する認知度の向上を図っております。しかし、近年の「産業展」は、BtoBというよりは、残念ながらBtoC、すなわち対消費者取引にシフトされつつあるように感じています。そこに一石を投じ、ビジネスに直結した幅広い市場の需要を取り込み、取引機会の獲得につながる、より力強い支援策を講じていく必要があるのではないかと考えております。
 区の制度である見本市等出店補助を活用し、東京ビッグサイト等で開催される展示会に出展した事業者さんから、多数の企業関係者との情報交換や取引に向けた商談につながったなどの声をお聞きしております。圧倒的多数の日本国内、海外からの事業者が結集する見本市や展示会に多くの区内企業が出展することで、モノづくりのまちアラカワへの関心や地域のブランド力が一層向上し、さらには区内製造業の製品や技術が注目されることで、出展企業の販路開拓も期待できると思います。
 しかし、小規模事業者にとっては、そうした見本市等へ単独で出店するには、経験やノウハウ、更には人手不足のほか、出展費用の負担も小さいものではないと思います。
 そこで、小規模事業所が多くを占める区内製造業のBtoBの販路開拓をより力強く支援していくために、これまでの補助制度に加えて、区が主体的に展示会等へ出展し、小規模事業者のカテゴリーに応じて共同参画させるような仕組みをつくり、BtoBの販路開拓につながるよう、強化を図っていくべきと考えますが、区の見解を伺います。
 また、併せて、残された今後の「産業展」のあり方をどのような方向へ持っていくのかについても区のご見解をお伺いします。
 そして、せっかくたくさん区民の集まる「産業展」ですので、消費者による「未来の商品」アイデア募集をしてみてはいかがでしょう。大企業と違って小規模事業者はマーケティング調査や商品開発にお金を多く裂くことがでないというのが現状だと思います。一方、消費者の方では、日常で様々な商品を使いながら「使いにくい」とか「もっとこんなのがあったら良いのに」という意見を持っているにも関わらず、なかなか生産者まで伝えるということまではしません。「新しいライフスタイルの提案」として、「社会や個人の課題」と「商品のアイデア」をセットで出してもらい、生産者と消費者で共有するという場があれば、産業展に来た人も参加型のイベントになり、満足度が高くなるのではないかと思います。消費者による「未来の商品」アイデア募集実施についての区の見解を伺います。
 
 次に、中学校防災部の今後の方向性についてお聞きします。
今年度、全中学校に防災部が創設され、地域の防災訓練等にも中学生が積極的に参加するようになり、新聞やテレビ等マスコミにも取り上げられています。大災害時の人命救助・消火の即戦力であることはもちろん、防災教育を毎年受けた中学生は、いつか成人となり、家庭を持ち、結果的に地域全体の底上げにつながると思います。子どもを通じて、親や地域社会に教育の成果が広がることも期待できます。
今後、さらに防災部の活動を充実させるとともに、地域での活動が円滑に進むよう、消防署等の意見を取り入れながら、具体的な活動範囲や役割等、教育委員会で指針を策定すべきと考えます。
その指針の中にぜひ参考にしていただきたいことがあります。それは、東日本大震災で「釜石の奇跡」と呼ばれた中学生達の話を聞くにつけ、災害という不測の事態に住民がいかに対処するかというソフト「社会対応力」を強化してほしいということです。
震災前に釜石市の津波防災教育を手がけた群馬大学大学院の片田敏(とし)孝(たか)教授は、学校の先生も親も関心が高くない中、テキストを試行錯誤してつくったといいます。ある日の防災授業は、「家に1人でいるとき大きな地震が発生しました。あなたならどうしますか?」と質問し、ほとんどの子どもの回答は、「お母さんに電話する」「親が帰って来るまで家で待つ」というもの。そのアンケート用紙に、「子どもの回答をご覧になって、津波が起きた時に、あなたのお子さんの命は助かると思いますか?」という質問文を添付し、子どもたちに、家に帰ってから親に見せるように言ったそうです。このおかげで地域の親の防災意識が上がったそうです。荒川区なら「津波」を「大規模火災」に変えても良いかもしれません。中学生の保護者もある時点で巻き込むことを考えてほしいと思います。
そして、知識と実践を組み合わせるということ、災害文化の醸成をお願いいたします。どれだけ知識を植えつけても、時間がたてば人間はその記憶を失ってしまいます。いざというときに無意識に行動できるようになるには、実践によって知識を定着させることが必要です。
災害時には想像力も必要だと思います。「災害図上訓練(DIG)」や災害対応体験カードゲーム教材「クロスロード」に加えて、例えば、「タイタニック号が沈む時にどうしたら被害者が少なくなるか」というワークショップや、宮城・岩手の被災者達が世界中に感謝の言葉を伝えるために公演された『飛び出す100通りのありがとう』という劇がありますが、その劇の中で全国からの貴重な支援物資でやっと届いた3本のバナナを100人で分けるというエピソードがありました。実際の話です。「3本のバナナを100人でどう分ける」のかというワークショップも考えられると思います。
阪神淡路大震災の5年後にできた兵庫県立舞子高校の環境防災科のカリキュラムも参考になるかもしれません。気象、災害史、危険個所、何が凶器になるか、地域ことを良く知るための「フィールドワーク」、これから区の防災課が作るという「災害時利用可能資源マップ」を一緒に作っても良いかもしれません。また、「地域安全マップ」「我が家の防災マニュアル」づくりで、自分の家が築何年か、その対策は何か、非常持ち出し袋の中身は何かを考えたり、高校生が小学生を教える「異年齢間の防災学習」や、世界の人々とコミュニケーションするために必要不可欠な道具である「英語を通した防災学習」、体験者の講話、被害連関図等の勉強をするようです。
先日の永久水利の防災訓練でも南二中のレスキュー部の「ポンプ操法」を拝見しましたが、知識・技術の習得も必要だと思います。「AED」「応急救命」の他に、「着衣泳」や「ロープワーク」、壁新聞、防災アプリ、災害FM等の「災害時情報の扱い方」、災害ボランティア、耐震補強についても知っておく必要があると思います。いざという時より前に地域の方々と知り合っておく必要もあると思います。
 中学校防災部の今後の方向性についてどうお考えになっているのかお聞きします。

最後に、隅田川の活用について質問いたします。
私は以前、勤めておりましたNPOで東京の水辺の活性化の担当として、手漕ぎボート体験をはじめ、水辺の多くの事業にかかわってきましたが、荒川区が8kmもの水辺を持ちながらあまり活用されていないことを常々残念に思っており、幾度かそれについて質問して参りました。
そして、今年が事実上、第1回目の開催となりました「汐入水辺フェスタ」は、これまで隅田川や水辺に目を向けたイベントは皆無だったのを打開して、東京都のご協力のもと、都立汐入公園で実施できたことはたいへんうれしいことでありました。
当日会場へ行き、拝見させていただきましたので、率直に所感を述べさせていただきます。1つは会場が分散していて、イベントとしての一体感が持ちにくかったことです。汐入タワーはメイン会場から200m程離れていたのですが、標識も少なく、初めて来る人は途中であきらめてしまうのではと思う程でした。2点目は、水辺自体があまり活用されていなかったことです。もちろん、汐入まちあるきや親子で作ろう紙粘土・折り紙教室、キッチンカーでの飲食提供はもちろん必要なことだったと思いますが、肝心の水辺の体験がなかったことはたいへん残念なことでした。3点目は水辺を見ながらくつろげる場所への誘導がなかったこと。公園の内側で遊具で遊んでいる親子連れはたくさんいたのに、隅田川沿いは閑散としていて、「水辺フェスタ」なのに川には無関心な様子で、もうすこし工夫が必要なのではないかと思いました。
かつて、汐入は水運と鉄道の結節点であり、石炭の集積地である隅田川貨物駅の構内には、瑞光橋公園の入江からと現南千住4丁目と8丁目の境を通る運河があり、隅田川2ヶ所から出入りができました。瑞光橋公園には昭和28年に建設された「汐入水門」があり、今は一部がモニュメントとしてあります。というようなお話は汐入の自民党議員、鳥飼氏の「新聞」に詳しいところですが、地域の歴史は非常に大切なものです。「汐入水辺フェスタ」のメイン会場は可能ならばもう少し水神大橋より下流の辺りにしていただき、ぜひ瑞光橋公園を入れるべきだと思います。
そして、この瑞光橋公園には運河の入り口だった入江がオイルフェンスに囲まれてありますので、この中で水辺の体験をしてはいかがでしょうか。今はやりの「ウォーターボール」でも手漕ぎボートでも良いと思います。荒川区や汐入地域の歴史を解説を聞きながらのクルージングは多くの人々を惹きつけるのではないかと思います。水辺の体験が安全にできるよう、浮き桟橋等、足元の確保はもちろん必要になってくると思います。
もう1ヶ所、水辺活性化に力を入れてほしい場所があります。荒川遊園です。昭和の終わりから平成3年にかけてリニューアル工事をする中で、当時東京都も国も河川敷に構造物を建てることを一切許していなかった時代に、「アリスの広場」を作ることを説得した熱心な荒川区職員がいたと聞いたことがあります。その職員の方は荒川上流から埼玉の物産をその広場で売ることも想定して作ったとのことです。時代が追い付いてきた今こそ、「水辺フェスタ」の開催をあらかわ遊園でも検討してはいかがかと思います。
水辺を見ながらくつろげる場所への誘導については、一過性のものではなく、水辺についての「ライフスタイルの新提案」をする気で工夫をしていただければと思います。スーパー堤防は非常に眺めも良く気持ちよいので、「眺めの良い隅田川テラスでごはんを食べませんか?」も良いですし、「ダンス教室」や「お茶のお点前」なんかも良いかもしれません。具体的なことを縷々申し上げましたが、「水辺フェスタ」の今後の展開について、区ではどのようにお考えになっているのか、見解をお伺いいたします。
次に「水上交通の活性化策について」お聞きします。
水辺の多くの事業に私がかかわっていたのは10年ものことですが、ソフトが活性化されてはじめてハードの整備が追い付くということがあると実感した経験があります。中央区の日本橋の橋詰に船着き場が整備されたのは2011年のことですが、船着き場が整備される前は、3面張りの護岸に高速道路の蓋の下で、ボートを寄せるところもなく、橋の下を回って帰ることしかできなかったのですが、3年経った頃、日本橋の船着き場の整備が決まり、今では年間5~6万人の利用のある船着き場になっているそうです。荒川区についてもまずは区民の関心を水辺に向けるというところから一歩一歩始めなければならないのだと思います。
さて、荒川区における水上交通の現状を確認いたしますと、以前荒川遊園の船着き場まで定期的に来ていた水上バスも乗船者の減少で、今では年に数回という水上バスの離発着状況です。イベントはといえば、お花見の時期に隅田川を台東区まで下って帰ってくるというものだけで、荒川区の水辺とは無縁のイベントになっているのは残念なところです。
5年後のオリンピック・パラリンピック開催に向けて、東京都内でも川や運河を使っての実験が始まっています。秋葉原から羽田を船で航行して、外国人観光客に水都東京の魅力を知ってもらおうという取り組みや、株式会社で水上タクシー「TOKYO WATER TAXI」を実験的に運航するといった取組みです。
荒川区には汐入、尾久の原、あらかわ遊園に3ヶ所の防災船着き場がありますが、あまり利用はされていないのが現状です。荒川区の水辺の活性化に向けた長い道のりの最初の一歩として何をするかについてですが、まずは水辺の魅力とその周辺の情報をしっかりと集めること、利用できる資源は何か、そして誰を対象に水辺を使った行政サービスを展開するかといった「荒川区水辺活用計画」をつくり、できることから着手していく時期に来たのではないかと思います。
観光の要素もありますので、対象は広く一般の人だとすると、下流の橋の満潮・干潮時の水位や、受け入れ可能な船の高さも調査が必要となってきます。橋桁の高さに問題のない、手漕ぎボートやカヌーは今度は今の船着き場の形だと適していないということになり、改善が必要になってくると思います。その後、荒川区の水辺ではこんなことができますということを情報発信していき、窓口はここ、手続きはこう、登録制にして、自己責任で、というような注意事項までできればお知らせしたいところです。
 計画を立てたら、行動の第一歩は、汐入、尾久の原、あらかわ遊園の3点の船着き場を実験的につないでみるということを行ってはいかがでしょうか。「川の手まつり」は荒川遊園ではもう実施できないとお聞きしていますが、汐入で実施する時にはぜひ尾久から区民を乗せて船で移動して汐入まで、また、尾久の原公園で開催の時は汐入からということもあるでしょう。橋桁を気にしなくても良い船も最近はありますので、ぜひ実施をご検討ください。その目的は、高齢化した区民の足としての利便性と、災害時には物資が水運で運ばれてきたり、避難したり、透析船を利用する可能性もありますので、いざという時のための防災訓練にもなると思います。そして、それが水上交通の活性化の端緒になると思うのです。
今後の荒川区の水上交通の活性化策について区の見解をお伺いいたします。

 以上、1回目の質問を終わります。理事者のみなさまには真摯なご回答をお願いいたします。ありがとうございます。