一般質問 2014年

 自由民主党の明戸まゆみです。自由民主党荒川区議会議員団を代表して、質問をさせていただきます。一般質問の機会をお与えいただきました同僚議員の皆様に大きく感謝を申し上げます。

 今年の9月29日、安倍晋三総理は第187回国会で所信表明演説を行い、「地方創生」や「女性が輝く社会」に向けて全力を挙げる方針を表明しました。日本は人口減少社会に入りつつあり、特に15〜64歳の労働力人口が2010年の8,174万人から、50年後の2060年には4,418万人程度と、46%も大幅に減少すると推計されています(国立社会保障・人口問題研究所2013年1月)。急速な少子高齢化によって労働力が減少し続け、深刻な労働力不足に直面する日本、現在の労働力にプラスできるのは、高齢者か外国人か女性の選択肢しかありません。もちろん高齢者も働いていただき、外国人も限定的に入っていただくが、「女性」には大々的に参入してもうらおうということで、解散により廃案になりそうな「女性活躍法案(女性が活躍できる社会環境の整備の総合的かつ集中的な推進に関する法律案)」が衆議院に提出された経緯だと思います。アメリカの金融グループ、ゴールドマン・サックスの試算では、今後、女性が働く環境をしっかりと整えることができれば、日本の労働人口は820万人増加し、GDPは約15%拡大すると予測しました。

一方、人口減少社会に歯止めをかけるためにも「女性」がキーポイントです。国の「経済財政運営と改革の基本方針2014」(2014年6月)いわゆる「骨太の方針」においても、経済再生の進展と中長期の発展に向けた重点課題として「女性の活躍」がありますし、日本創成会議・人口減少問題検討分科会の報告「ストップ少子化・地方元気戦略」でも20代から30代の女性に注目して消滅自治体を名指しで指摘し、地方と都市のバランスを取り、女性のワークライフバランスを考慮した上で多くの示唆に富んだ戦略を示しています。出会いと結婚の機会づくり、ワンストップ相談体制、不妊治療、産後ケア、養子縁組、一定規模のマンションに保育所設置、ワークライフマネージメント、多子世帯優遇、多様な働き方等々。50年後に1億人程度の安定した人口構造を保持することを目指すには、9割の若者が結婚し、2人超の子供を育てる状況が実現するという国の「選択する未来」委員会の具体的な目標も出てきました。日本の人口がターニングポイントを超えた今、「女性の活躍」を促進する環境づくりは喫緊の課題として私たちの前に立ちはだかっているのです。

 それではどのようにして女性の活躍を応援していくのでしょうか。「女性活躍法案」の第1条は「男女がそれぞれ自己の希望を実現し豊かな人生を送ることができるようにする」という文言ではじまります。「女性の活躍」のためには男性の協力がかかせません。家事、子育て、介護等から学ぶものは非常に大きく、これらを経験するとビジネススキルも大きく伸びると言われており、男性も経験すべきです。そして、「荒川区男女共同参画社会推進計画」でも「男性が仕事中心のライフスタイルを見直し、家庭生活に積極的に参加するということが重要」とあり、男性の意識改革は必須事項だという前提で、ワークライフバランスを抜本的に変革し、女性のライフステージに対応した支援の促進、結婚しやすく子育てしやすい環境を実現する仕組み、結婚・妊娠・出産・育児の「切れ目のない支援」を行っていく等、荒川区でも推進していく必要があると思います。こうした観点を踏まえつつ、今回の一般質問でははじめに、これからの女性の活躍を応援していくための取り組みについて伺います。

 荒川区ではここ数年、若者の出会いや結婚の機会づくりのイベントがぽつぽつとおこなわれています。社会福祉協議会のパーティや勤労者福祉サービスセンターのバスツアー、ついこの10月も東京商工会議所荒川支部を中心として「もんじゃコン」が行われました。若い独身男女がターゲットのイベントがあまり多くない荒川区において、地域活性化にも寄与し、参加した方はたいへん良い取組みと言っておられました。行政に積極的な展開を求めるものではないが、区内の団体等により開催への側面的な支援等の可能性については引き続き検討をお願いしたいと思います。
 結婚の部分は別にしても、これまで区では、妊娠から出産、育児へと続く「切れ目のない支援」について、母子健康手帳の交付に始まり、保健師による乳幼児の全戸訪問、乳幼児健診、そして西川区長を先頭に保育定員の大幅な拡大を図るなど子育て環境の整備、充実に積極的に取り組まれてきました。その結果、平成26年4月時点の保育所待機児童は実質ゼロとなっており、「子育てをするなら荒川区」と言われるほど、区の取り組みは内外から高い評価を受けております。「日本創成会議」が出したレポートでも、「子育て支援」が評価され、2040年の20~39歳の若年助成人口減少率が23区内では一番低く評価されており、方向性に間違いはないと確信した次第です。
来年から始まる「子ども子育て新システム」で、大幅な変更が迫られる中、自民党荒川区議団でも地域の声として厚生労働省に要望し、「学童」と「放課後こども教室」の一体型保育も認めてもらったところです。今後もしばらくの間は区内の年少人口の増加が見込まれている中にあって、どのように子育て環境の更なる整備を進めていこうとされているのか、区の考えを伺います。
 
 次に子育て女性のための「ワンストップ相談体制」について伺います。高い出生率と女性の就業率を両立させている北欧のフィンランドに「ネウボラ」という制度があります。安心して出産、育児ができるようにと、妊娠中から継続的に子どもが小学校にあがる頃まで女性の相談に乗る仕組みです。日本でも同様の取り組みをする自治体が出てきており、国でも「妊娠・ 出産包括的支援モデル事業」として後押ししています。
 例えば、千葉県浦安市では、母子健康手帳を受け取に来たすべての人を対象に、保健師と市が独自で養成した「子育てケアマネジャー」が2人1組で面談をし、妊娠中相談できる人はいるか、何か困りごとはないか、1人ひとりに合わせた「子育てケアプラン」をつくり、ヘルパー派遣等様々なサービスにつなげ、手帳交付時と出産前後と子どもの1歳の誕生日の頃の計3回行うとのことでした。また、埼玉県和光市でも取り組み始めており、保育園の2階の子育て支援センターで「母子保健コーディネーター」と座布団に座りながらゆっくり話ができます。子育ての時期は経済的困窮、養育の不安、身近に相談相手がいない等、様々な悩みを抱えていることがあります。「ケアプラン」の内容は様々な職種が集う会議で議論し、内容を練り、担当者のスキルアップを図っていくそうです。
荒川区でも「母子健康手帳」を渡す時に相談にのり、課題があれば「保健部」「子育て支援部」他の部署と連携しながら解決を図っていく「ネウボラ」のような「切れ目のない支援」を行う体制をお願いしたいと思いますが、区の見解を伺います。

 次に「女性の就労支援」についてお聞きします。女性が自らの持つ能力を十分に活用し、活躍する社会を作っていくためには、女性の就労機会の拡充はとても重要です。私は、国が掲げた「ワークライフバランスの抜本的な変革と女性のライフステージに対応した支援等の推進」の意味するところは、女性が様々な選択肢の中から、自らの生き方を選ぶことのできる社会をつくるということだと考えています。男女平等参画社会の形成が強く叫ばれて久しいが、現状の就労環境は男性優位となっており、女性のための就労支援をさらに進めていく必要があります。
 区では、平成24年度に就労支援課を新設したことをはじめ、これまで区民の就労支援や雇用の確保には、他の自治体の何倍もの努力を行ってきたと評価しています。そうした努力が厚生労働省に認められ、本年9月、日暮里駅前に都内で2か所目となるマザーズハローワークが開設されたと聞き、先日行ってお話を伺ってきました。
 マザーズハローワークは、開設間もないが、利用実績等についても順調に経過しているとおっしゃっていました。区の就労支援課とさらに連携することで、女性の就労が加速するのではないかと期待しています。課長さんのお話ですと、このマザーズハローワークは未就児童はもちろん18歳の未成年のお子さんを持つお母さんまでを対象にしているので、このことをもっとPRしてたくさんのお母さんにご利用いただきたいと言っておられました。つきましては、区が把握しているマザーズハローワーク日暮里の最新の状況はどうでしょうか。
また、マザーズハローワークの設置を契機に、子育て女性の就労支援について、さらなる強化を図るべきと思います。たとえば、キャリアカウンセラーの栗原(くりはら)知女(ともじょ)氏によれば、40代、50代の女性のためには自宅から「半径4km圏内就職」を薦めているそうです(「アクト21 Information vol.8」)。自宅から近い住宅地および隣接している商業地の範囲内で職場をみつければ、自転車なら15分程度で行き来できるので、子どもの急な発熱等の突発的な出来事にも対処しやすく、また、大混雑の通勤電車にも乗らなくて済むからとのことでした。出産時に退職してしまう日本の女性の労働力率は「M字カーブ」を示しますが、退職しないで産休で職場に復帰をする社会を実現する一方、一旦退職して専業主婦になっても社会復帰したい時にできる選択のできる社会の両面が必要なのだと思います。
 また、同氏によれば、病院、歯科医院、薬局、介護、スーパーマーケット、給食配食サービス、ファミレス、学習塾、中小企業の事務等、単なる受付や加工、調理、接客等資格の不要な仕事も多いとのことでした。マザーズハローワークで聞いても、この「半径4km圏内就職」はとてもニーズが多いとのことでした。インターネットやハローワークの求人情報として公開されることは少なく、「パート募集」といった張り紙がされていることが多いそうです。たまたま私の知り合いの女性は今月からあらかわ遊園で働くことになったのですが、この求人情報は張り紙で知ったとのこと。マザーズハローワークでも区の仕事は人気があるとおっしゃっていましたので、こういった情報を区や関連業界と連携して掘り起こしてみるのも良いかもしれません。ご見解を伺います。

 次に子ども達の「自然体験事業」の拡大についてお聞きします。さて、日本のこれからは「地方創生」を都市においても考えざるをえない時代になると思います。地方出身者の私にとっては深刻を通り越して思うところはあります。東京へ一極集中している人口流入に歯止めをかけるとともに、地方の活力を掘り起こして地域社会と人材と仕事をつくっていかなくてはなりません。こうした動きに大きく関連する「地方再生」について、政府は「まち・ひと・しごと創成法案」を国会に提出しましたが、この度の衆議院の解散により廃案となってしまったことは大変残念でありました。
それではどのようにして都市が「地方創成」に関わっていくかと言えば、ひとつは「交流人口の拡大」があると思います。子ども達の「自然体験事業」の拡充を図り、子ども達を地方に連れて行ってはいかがかという提案です。
「自然体験」が地方の活性化につながることはもちろんですが、子ども達にとってはもっと大きな良い影響があります。近年、人々の生活が便利になる一方で、人と自然や社会とのつながりを実感することが都会では特に難しくなってきています。文部科学省の「平成22年度農山漁村での宿泊体験活動に関する児童の意識調査」では2泊3日以上の宿泊体験活動を実施した小学校215校(有効回答数は142校)の4年生から6年生を対象に事業の前後で調査したところ、「いやなことは、いやとはっきり言える」「だれとでも仲良くできる」「人の話をきちんと聞くことができる」「自分に割り当てられた仕事は、きちんとやる」について6段階で「あてはまる」か「あてはまらない」で答えてもらった結果、いずれの項目でも「とてもよくあてはまる」が増えていました。「自然体験」をすることで、生きていく上で基本的な「生きる力」を体得することができ、また自然への畏敬の念を育み、自然環境保護の意識啓発にもなる他、野外キャンプ等は仲間意識を強め、子どもの生きる力を醸成すると言われています。
 子ども達にもっと「自然体験」をということで、昨年2013年に、自民党政務調査会は、新たな法整備も視野に入れ、「子どもの元気!農山漁村で育むプロジェクト小委員会(土屋正忠委員長)」を立ち上げ、青少年の自然体験活動の必要性を研究し、その充実を呼びかけています。また、提出法案として「学校教育等における子ども滞在型農山漁村体験教育の推進に関する法律案」がつくられ、農山漁村に3日~1週間宿泊し、体験するプログラムを国(文科・農水・総務・環境省)と自治体で体制を整え推進していく方向性が示されています。
 ひるがえって荒川区ではこれまでも、昭和62年からの「自然まるかじり体験塾(定員45名)」や昭和59年からの「少年チャレンジキャンプ(100名程度が参加:リーダー含)」などの事業を積極的に支援してきました。また、「学校パワーアップ事業」等も活用して、山形県鮭川村での鮭の放流事業や新潟県三条市でのブナの苗木の植栽等様々な自然体験活動を行っており、これまでの区の取り組みを高く評価しております。特に感動したのは、先日の原中学校20周年行事の祝賀会で峯川一義前校長が、はじめて「学校パワーアップ事業」が始まった年、生徒達に自然の神秘さや敬虔な体験をさせることが特に必要だと夏季自然体験教室に連れて行き、朝の3時に起きて夜明け前の山道を歩いて大菩薩峠から朝日を見たこと、夜10時まで地面に寝そべって満天の星空を観察したこと、公立の学校教育がここまでできるんだということを生徒にも先生にも示したかったと非常に熱心にお話されていました。
 以前の職場で、自然体験活動協議会(CONE・RAC)の指導者として川の体験活動等を行っていた経験からも、自然に包まれ観察することによって豊かな感性を磨かれ、困難さの中で協力し合う人間関係を結び合い、本当の「生きる力」を得れるのだと思います。そして、それは大人になってその子どもの大きな力になるということを確信しています。ぜひ今後は、これまでの区の事業の成果等を踏まえ、子ども達が将来の日本を支える心豊かな大人となれるよう、自然体験事業の一層の拡充を図るべきだと考えます。具体的には、学年によって、幼少期からの身近な場所での自然体験や、東京に残る奥多摩の自然を活用した取組み、更には幸せリーグの加盟自治体と連携した事業等が考えられますが、区の見解を求めます。

 最後に商店街事業と空き店舗対策についてお聞きします。最近の商店街振興策はというと個店の魅力アップに力点が置かれてきています。荒川区でも3年前からはじまった「まちなか商店塾」は23区初で始めて、その後他区でも行われるようになりました。1年目は多くの参加者があったと聞いていますが、3年目に入って状況はいかがでしょうか。人気の定番講座も良いものですし、毎年新しい講座も開拓していかなければ新鮮味がありませんので、まとめていくのはたいへんなご苦労だと思いますが、状況を教えていただければと思います。昨年からは「一店逸品運動」を推進事業として取り組んでいたかと思いますが、そろそろ発表できる頃に来たのではないかと思いますので、合わせてのご報告をお願いいたします。

次に空き店舗対策についてお聞きします。商店街は、単に物の売り買いだけでなく、陽気のことや体調の良し悪し、さらには家族の様子等に至るまで様々な会話を通じて個々のコミュニケーションが生まれるほか、それらが相まって地域コミュニティの核となるなど、地域力を高めるための一翼を担っている存在であることは、常々、西川区長がスピーチされるとおりで、もちろん私も考えを同じにしております。
特に、日が短くなった今日この頃では、商店街の明かりが道路を照らし、さらには地域を照らすことによって、自分の心も明るくなると同時に、地域住民の安全と安心を高めているとも思っています。
 そのような状況の中で、商店街の中にはポツポツと空き店舗が目立つようになっており、いつかは空き店舗ばかりになり、商店街を成さなくなってしまうという危惧があります。そうすると、前述したような商店街が持つ様々な機能が失われ、引いては地域力が低下することさえあると考えます。
 今年は会派の視察で、香川県の丸亀商店街へ行ってきました。全国で成功している商店街の中でも屈指に入ると思われますが、デベロッパーを廃し、定期借地権を使い、土地の所有と利用の分離を行い、ガラス張りのアーケードとドーム、広場、通路を整備し、名だたるブランドのお店を集めた商店街は見事という他はない再開発で、荒川区の商店街にそのまま当てはめるのは厳しいと思いましたが、いくつか学ぶことがありました。1つは上階を集合住宅にして確実な資金と対流人口を増やしたこと、地域の土地を有効にマネージメントをする「丸亀町不動産株式会社」を設立しているところです。1972年の町営駐車場の土地の取得のためにつくった会社が、後の商店街のインフラ整備やその後の大規模な商店街再開発につながっているというものです。商店街単独では活性化は難しいと思います。不動産事業者と連携した空き店舗の情報発信ができないかと考えています。
 というのも、新たに創業する方や店舗を開きたい方等が、商店街における空き店舗の情報を得るには、個別に商店街を廻るほか、不動産事業者に尋ねなければ様々な情報を得られないなど、そうでなくても開業に向けた準備等があるのに、時間と手間がかかる状況があります。
 空き店舗の活用を促進するため、商店街の空き店舗についての情報を一括して閲覧等ができるようにし、新たに創業する方や店舗を開きたい方等に対して情報の提供を行うのも空き店舗解消のための一つの方策であると考えますが、区としての見解をお聞かせください。
 不動産に加えて言えば、丸亀町商店街のデザインはたいへんすぐれたものでした。地域の工務店や若手デザイナーの協力、PRのためのIT業者や印刷業者とのタイアップも考えられますが、まずは空き店舗不動産の情報発信ということでお願いいたします。

 以上、1回目の質問を終わります。理事者のみなさまには真摯な回答をお願いいたします。ありがとうございます。