幸せの国;あらかわ文書館
区のかかげる「幸福実感都市あらかわ」は、ブータンをヒントに区長が打ち出したものですが、 私自身が自民党荒川支部の公募で書いたレポートのテーマも同じものでした。人間生活とは、 まさに幸福の追求であるという意味では同じ問題意識で区政に取り組んでいます。区では (財)荒川区自治総合研究所(Rilac)も立ち上げました。このページでは、日常で見聞きする 中から「幸福」について気になる文章・データ等をメモ代わりに残します。 |
|
| 【1】物質的豊かさと「善き生」(well-being)とを、単純に同一視することはできない。より多くの財を手に入れ、自由に できることとは、よりよい生活を実現するための手段に過ぎないし、その手段をよりよい生活へと結びつける際には、 年齢、性別、健康状態など、他の様々な要因が影響を与えるからである[Sen 1997a]。センはしたがって、人の厚生 水準を測る物差し、数学的な表現をすれば評価の空間(space)として、財やサービスを用いること自体が不適切であ ると指摘し、財やサービスを用いて人がどのような状態(being)や行動(doing)を取れるかという「ファンクショニング」 (functioning)の物差しで測らなければならないと主張した。そして、ある人が達成可能な様々なファンクショニングの 集まり、すなわち様々なファンクショニングを達成できる実質的な自由(freedom)こそが人の厚生水準を示していると して、これを「ケイパビリティ」と呼んだのである[Sen 1985b; Sen 1999d]。(絵所秀紀・山崎幸治 『アマルティア・センの世界』 p.90)*インド出身の経済学者・ノーベル経済学賞受賞者。飢餓の分析、厚生経済学、潜在能力(capability ケイパビリティ)アプローチ、「人間の安全保障」等を研究。 |
|
| 【2】貧困の特徴として次の6点があげられている[World Bank 2000a; 黒崎他 2000]。第1に多面的な現象であること、 第2に飢えに代表される物質的な剥奪が深刻なこと、第3に心理的側面における「無力感」(powerlessness)が広範に 見られること、第4に道路・運輸・上水道など基礎的な社会基盤整備がなされていないこと(社会インフラの整備)、第5 に病気への脆弱性や教育水準の低さなど人的資本の不足、そして第6に様々なリスクにさらされやすく、一旦不運に見 舞われると極めて脆弱な状況に陥ってしまうという「リスクへの脆弱性」(vulnerability to risk)である。これらの多面 的な剥奪状況が、センのいうところの「基本的なケイパビリティの剥奪」にほぼ重なることはいうまでもない。 (世界銀行 『貧しい人々の声』(ただし前掲書中p.91))*この報告を読んだ時には、すでに日本はひどく貧困状態に陥っているに違いないと思ったものだった。 |
|
| 【3】「人間開発指数」に対抗して、新しい社会経済指標創りを試みよう。ここでの貧しさとは、経済的な従属(生活手段 の被支配)と生活環境の破壊から生まれる。豊かさは、経済的な自立(経済活動の自主管理)と生命活動の充足をめざ す暮しである。・・・@次世代の単純生産からの乖離率(・・・一人の女性が生涯に産む子供の数が2.2人より大きく上回 ったり、大きく下回ったりすると、年齢構成の歪みが特定の世代の負担を過重にし、その社会は様々の困難に直面する)、 A精神病院に長期間隔離される患者数の比率、B生活苦による行方不明(蒸発)者や自殺者の比率・・・以上の貧困指 標とは反対の立場から、地域の富裕指標を考えると・・・@地域内における物質循環比率、A女性による経済活動参加 の比率、B人口に占めるボランティア活動家の比率・・・(前掲書p.206-207) |
|
| 【4】アメリカの研究組織、ワールド・バリューズ・サーベイが各国の個人を対象に、現在の幸福度を調査し、ランキング した「幸福度ランキング」(2008年に発表)・・・とは、約100ヵ国の地域を対象に、「あなたは幸せですか?いまの生活に 満足していますか?」と質問して、「幸せです」と答えた人の数を調べたものです。その結果、デンマークが世界で第1位 でした。・・・・2位はプエルトルコ、3位はコロンビア。アメリカは16位・・・日本は43位、中国は54位、韓国は62位という 結果でした。また、イギリスのレスター大学の心理学者が発表した幸福度マップという別の幸福度調査でも、デンマーク は1位になりました(2006年発表)。これは、イラクなどの紛争国を除く世界178ヵ国を対象に、経済状況や医療制度、教 育などのデータを分析、幸福感に影響を与える要因となる医療制度、裕福度などを数値化し、ランキングにしたものです。 ・・・2位はスイス、3位オーストリア、・・・アメリカは23位、日本はなんと90位でした。・・・OECD(経済協力開発機構)に 加盟している国の所得分配と貧困の状況に関する比較調査の報告書(2005年)によると、貧困率がもっとも高い国はメ キシコで20.3%、次いでアメリカ、トルコ、アイルランドと続き、日本は15.3%で第5位です。先進国だけに注目すれば、 日本はなんと第3位の高貧困率の国になるのです。・・・貧困率(国民の何%の人が貧困者であるかの比率)という定義 は様々ですが、OECDはその国の全国民の平均所得の50%以下の所得しかない家計を貧困者と見なしています。この 定義に従うと、日本の貧困率は15.3%と計測されました。10年前では8%台だったので、約2倍も増加しているのです。 貧困率が高まっているという事実は、日本の生活保護制度の対象者の数でも確認できます。不況の影響もあり、2009 年1月時点で生活保護費を受給している人は1,618,000人に上りました。バブル崩壊後の1999年は631,000人でしたの で3倍に近い増加です。・・・一方、デンマークはOECD内で一番貧困率の低い国であり、国民の個人収入の差が一番小 さい国です。ヨーロッパ全体の貧困度は7人に1人であるのに対し、デンマークでは17人に1人となっています。デンマー クの最も貧困な人たちの収入は、ほかの諸国の人たちの収入よりははるかに多いといわれ、個人収入の平均化された 国といえるでしょう。(千葉忠夫 『世界一幸福な国デンマークの暮らし方』p.3-34) *ただいま読書中。 |
|
| 【5】収入が上がるにつれて生活の満足感は上昇するものの、幸せな気分は年収7万5,000ドル(約630万円)前後のとこ ろで頭打ちになる―◆米プリンストン大学の教授らが年収と幸福の関係を統計的に分析した。米国人45万人以上を対象 にした電話調査をもとに、笑う頻度などに表れる感情の起伏を考察したという。「高収入で幸せになれるとは限らない」。 まぁ、想定内の結論ではある・・・(『読売新聞』2010.9.8「編集手帳」) |
|
| 【6】表現することで愛され、不幸を脱し、幸福に至るのだ。それが表現愛だ。そもそも不幸って何?愛が、充実感が足り ない。貧しい。幸せと思っても、その場かぎり。永遠には満たされないから常に不幸に舞い戻る。けれど、人間が永遠に 満たされるなんてことがありうるか。生は有限だ。みんな死ぬ。対して永遠は無限だ。人間と永遠は両立しない。では永 遠はついに人間とは無縁なのか。確かに永遠自体は限りある人間の所有物にはなるまい。しかし人間は永遠を感じるこ とはできるのだ。鐘を叩いて響きの余韻に浸る。名画に身入り時を忘れる。そんなとき永遠は我にあり。そして永遠は充 足であり幸福だ。大いなる愛だ。日常の仕事や人との交際や芸術鑑賞という自己表現活動を通じ、人間は永遠に包まれ る。けっこう幸福じゃないか。・・・(『読売新聞』2010.10.4 よみうり堂書評:『木村 |
|
| 【7】ブータンは08年に立憲議会制民主主義国となり憲法を公布し、憲法でGNHを国是とうたう。・・・ブータンには、世界銀 行のいう貧困者(1日1ドル25セント未満で暮らす人)が23.2%(2006年)おり・・・しかし、西欧の論理で「貧困」か「充足」か といった二者択一的に判断することは適切ではない。ブータンでは精神文化としての仏教が各世代に継承され、助け合い の精神が社会の基本にある。互助・互恵、寛容、小欲知足、公平などの価値観が浸透している。・・・「ブータンの民主主義 には土台に仏教の教えがある。ブータンデモクラシーはうまくいく」との回答があった。05年の国勢調査で97%が「幸せ」と 答えたことも、仏教の精神が生活の土台にあるためだ。このように清貧だが心豊かに生きる国を「ブータンモデル」と呼ん ではどうであろうか。・・・(『読売新聞』2010.4.21 論点: |
|
| 【8】・・・「居場所と出番」は、幸福条件のひとつです・・・「ゼロから考える経済学」(英治出版)で、社会科学者リーアン・ア イスラー氏が「思いやりの経済システム」の構築を提案していた。これまでの経済システムは、自己利益を最大にしようと する「経済人」が前提で、弱肉強食の新自由主義や強欲資本主義を生んだ。脱工業化が進む先進国は既存の経済の枠 組みでは成長できない。経済的に軽んじられてきた無報酬の家庭労働や地域活動、教育・福祉などの「思いやり分野」を 評価し、対価を認めることなどが成長や幸せを生む―というような趣旨だった。 (『読売新聞』2010.1. けいざい百景:近藤 和行 |
|
| 【9】この世の最大の不幸は、貧しさでも病気でもありません。自分が誰からも必要とされない と感じることです。そして、 今日の世界における最悪の病は、そういう人に対する愛が足りないことです。 (マザーテレサ) |
|
| 【10】食べることは、幸福を形成するかなり大きな要素である。私は、気の置けない友人とおいしい食事を共にする時幸せ だなあと感じる。子どもたちにも、そんな幸せを味わえる大人に育ってほしいと思う。ちなみに私は、実家に顔を出しては食 事だけして帰ることが多い。母は「立ち寄る理由はご飯だけ?」と苦笑するが、幼い頃から親しんだ味を家族で楽しむひと ときは、何にも代え難いものがある。(『読売新聞』2010.12.18 NEWSなおにぎり:社会部次長 若江雅子 |